長源寺

【ちょうげんじ】

長源寺の山号は“蟹沢山”というが、この寺には蟹の妖怪(蟹坊主)にまつわる伝承が残されている。

昔、長源寺では住職がたびたび消え失せてしまうということが続き、いつの間にか無住の寺となっていた。ある時、一人の諸国行脚の高僧が村人からその噂を聞きつけ、一夜の宿を取った。

すると真夜中、怪しい気配と共に巨大な僧が現れ、「両足八足、横行自在にして眼、天を差す時如何」と問いかけてきた。すると高僧はすかさず「汝は蟹なり」と大喝するや、持っていた独鈷を投げつけた。投げつけられた僧はたちまち巨大な蟹に変じて、そのまま逃げ去ってしまった。

翌日、村人と血の跡をたどると、甲羅が砕けた大蟹が死んでいた。高僧は救蟹法印と名を改め、村人の要望によりこの寺の住職となったという。

この寺の境内には、2つの穴の開いた大岩があるが、これは大蟹が岩を鋏に刺して投げつけたものであると伝わっている。またこの伝説の縁起を示す掛け軸も残されており、それによると、大蟹の割れた甲羅から千手観音が現れたため、この寺の本尊は千手観音となったとされている。

アクセス:山梨県山梨市万力