十六羅漢岩

【じゅうろくらかんいわ】

吹浦の海岸に、自然石から削り出す方式で造られた十六羅漢像がある。羅漢像以外にも釈迦牟尼、文殊菩薩、普賢菩薩、観音菩薩、舎利仏、目蓮の像、合わせて22体が置かれている。海岸線に囲まれた日本にあっても、海辺にまとまった羅漢像があるのはおそらくここだけである。非常に希少な存在である。この周辺の岩は鳥海山の噴火で流れてきた溶岩が固まったもので、安山岩とのこと。彫りやすい材質であるが、波浪の激しいこの地にあっては、それ故にわずか150年ほどでかなり浸食・風化してしてしまっている。

これを造ったのは、吹浦にある海禅寺の住職・寛海和尚である。この海で遭難して亡くなった人の霊を慰め(潮流の関係で、遭難者はこの羅漢像のある浜で発見されることが多かったらしい)、安全祈願をするために発願し、元治元年(1864年)から事業を始め、明治元年(1868年)に完成した。和尚は酒田まで布施を集めに回り、ある程度金が貯まると一体の像を造るということを繰り返して作り上げたと言われる。

<用語解説> 
◆十六羅漢
羅漢(阿羅漢)は「尊敬を受けるに値する者」の意味で、仏弟子の中で最高の地位にある者を指す。十六羅漢は、びんどらばらだじゃ、かなかばっさ、かなかばりだじゃ、そびんた、なくら、ばっだら、かりか、ばざらほったら、じゅばか、はんだか、らこら、ながさいな、いんがだ、ばなばし、あした、ちゅうだはんたかの尊者となる。

◆寛海和尚(大法寛海)
1801-1871。酒田の生まれ。十六羅漢像を完成させて後、雪の降る夜に寺から抜け出し、海に入りそのまま姿を消したという。

アクセス:山形県飽海郡遊佐町吹浦