空鉢塚

【からはちづか】

東播州地方には古刹がいくつかあるが、これらの開基とされるのが法道仙人である。行基・空海・慈覚大師のように全国各地にその開基とされる寺院があるわけではなく、法道仙人の場合はこの東播州のエリアにほぼ限定されていると言ってもいい。

法道仙人は“仙人”と名が付くが、インドの僧とされている。ただ謎の部分が多く、6~7世紀頃朝鮮を経由して来日したとされる(来日の際に牛頭天王が共に来て、姫路の広峯神社に祀られ、さらに京都祇園の八坂神社に祀られるようになったという伝説もある)。そして超人的な術を会得していたと言われる。特に有名なのが、仙人が持っていたとされる鉄鉢であり、この鉢を自由自在に飛ばして米や食料などのお布施を受けていたとされる。それ故に別名を空鉢仙人とも言う。

ある時、朝廷への年貢米を積んだ船が沖合を通りがかった。するといつもの如く法道仙人の空鉢が飛んできた。しかし船主は、朝廷へ献上する米なので布施にすることが出来ないと言って聞かせた。すると空鉢は山の方へ引き返していったのだが、それに付いていくように積み荷の米俵がどんどんと宙を飛んでいき始めた。仰天した船主は必死に空鉢と米俵を追い掛けて山へ登っていった。結局、法道仙人の籠もる法華山まで行き着いた船主は訳を話すと、仙人は再び米俵を飛ばして船まで返したという(しかし一俵だけは途中で落ちてしまい、その地は米田(米堕)と呼ばれるようになったとのこと)。

かつては海を見下ろしていたであろう竜山の中腹あたりに、空鉢塚という碑がある。法道仙人はこのあたりの岩の上に空鉢を置いて、沖を通る船に布施を請うたとされている。またこの碑を設計したのは、江戸時代の絵師・曾我簫白の弟子であった、高砂在の簫月である。

アクセス:兵庫県高砂市竜山