ささやき橋

【ささやきばし】

鞆の浦にある石畳の道の途中にある橋である。ただし2歩もあれば渡りきってしまうほどの短さであり、おそらく欄干がなければ全く道の一部と思って通り過ぎてしまうような橋である。

第15代応神天皇の頃、百済より王仁博士が来日。一行を乗せた船が鞆の浦に到着した。朝廷はこの賓客をもてなすため、接待官として武内臣和多利、官妓として江の浦を当地に派遣した。ところが、この二人は仕事で何度も会ううちにすっかり恋仲となってしまったのである。橋のたもとで逢瀬を重ねる二人の仲はやがて上官の知るところとなり、密会を止めるように忠告された。しかしそれを止めることが出来なかった二人は罪を問われ、お互いが抱き合えないように後ろ手に縄で縛られると、そのまま海に沈められてしまったのである。

ところが、和多利と江の浦が密会していた橋のたもとで、夜ごと二人がささやきあう声が聞こえるという噂が立った。そしてその橋はやがて“ささやき橋”と呼ばれるようにあったという。

<用語解説>
◆鞆の浦
古代より潮待ちの港として栄える。『万葉集』にも鞆の浦を詠んだ歌が残されている。

◆王仁
『日本書紀』によると、応神天皇15年に百済より日本に来る。また『古事記』によると、『論語』と『千字文』を日本にもたらしたとされ、日本に漢字と儒教を持ち込んだ最初の人物であるとされる。

アクセス:広島県福山市鞆町後地